2009年6月13日土曜日

ダッタンソバ(3)(★)

6月13日


「ダッタンソバの栽培技術と品種」

今回の土日もダッタンソバの続きになります。
何だか味も素っ気もない書き方ですが、日本にはダッタンソバについての情報が少ないと言うのか、とにかく日本に馴染みのない作物なので、一応の常識程度として目を通しておいて頂きたいと思います。
ダッタンソバが最近ではかなり流行ってきていますが、だからこそ、基本を知っておいて頂きたいと考えるのかも知れません。

★ ダッタンソバの栽培技術

普通ソバより野生に近いものだから、栽培も簡単だろうと考えられるかもしれないが、そうではない。
病気と虫害の種類は普通ソバと大差なく、うどんこ病や褐斑病(褐紋病)などの普通ソバと同じ病気にかかるが、普通ソバより病気に弱い。また発芽初期は根切り虫の害が大きい。、したがって、畑は十二分に耕し、深耕して清浄に保つ必要がある。
もう一つは収穫時の問題で、無限伸育成の程度が普通ソバより大きく、登熟の固体内変異著しいのと、脱粒性が大きいので、収穫時期の決定が難しい。これは収量性や食物としての利用場合の品質に関係するばかりでなく、種子として用いる場合にも大きな影響を及ぼす。

★ ダッタンソバの品種

これまでのダッタンソバに対する見方から推測されるように、ダッタンソバは他の主要穀物のような近代的な育種の経緯は極めて短い。しかし、広い地域で栽培されてきたから、それぞれの環境条件に適応した在来品種が多数存在する。

ネパール国内から収集した94の在来品種を粒の色と形で分類すると図○のようになり、地域によってそれらの出現頻度は異なっていて、東ネパールと中西部ネパールでは灰白色長粒型と灰白色短粒型がほとんどで、両地域ともに標高が2000m以下では長く、標高が高くなると短粒型が多くなる。西ネパールでは標高に関係なく短粒型は10%以下で、殆どが灰白色長粒型である。黒色長粒型は東と中西部の2500~3000mで見られたが、西ネパールでは3000m以上にある。
粒型の違いは最もわかり易いので、農民は品種の早晩性や美味しさなど品種の特徴を示すのに用いている。なお、翼粒型は農民たちは雑草と認識している。
この話の続きはネパールの項に譲りたい。

ダッタンソバが短日植物あるのは普通ソバと同様で、暑さに弱く、寒さに弱い作物で、晩霜と初霜をさけて栽培されるから、緯度と標高によって大枠はきまる。すなはち、高緯度ほど短日反応性の弱いものが分布しており、標高の高いところは短日反応性の弱いものが分布している。
しかし、実際にダッタンの栽培されるところは谷間のようなところだから、小地域でみれば前述の大枠は必ずしも法則的にはあてはまらない。
ダッタンソバの収量は自殖性で不受精花のない分普通ソバよりも一般に多収と言われているが、筆者らのダッタンソバと普通ソバと20数品種を供試した栽培試験で、国内での試験でもネパールでも1.5倍から2倍余りの収量を得た。


★ ダッタンソバの新品種育成

中国では地域の農業技術研究所によって、それぞれの地域に適合した奨励品種が品種育成されている。九江苦蕎、西蕎1号、川蕎1号、楡6-21、鳳凰苦蕎などであり、選抜育種、ガンマー線照射、固体あるいは在来品種間の交配を主とした方法で続けられている。

日本での最初の育種は旧ソ連から入手した在来品種の選抜で、北系一号が北海道全域に適合した品種として育成された。先にあげた中国の奨励品種の粒の大きさは1000粒重でみると、20~22グラムであるが、北系1号は16グラム程度で、かなり小粒である。

その後、随分力を入れて育種が進められているが、残念なことには一般的な利用が進まない。その理由についてはまた後で述べよう。

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