2009年6月16日火曜日

朝鮮半島の北と南のソバ(★)

6月16日
「朝鮮半島の南と北」 

今日は「K」の付く国。Korea 
政治的には韓国と北朝鮮は違うけれど、世界のソバの立場では切り離しては語れない。
しかし、改めて別の国として取り扱うためには、現状を把握することは難しいだろう。
次回からも朝鮮半島のソバとして取り上げたい。

朝鮮半島にはソバの製麺方法は大きく分けると、押し出し麺と手打ち手きりの日本とほぼ同様の方法の二種類がある。
押し出し麺のほうが古くて、昔は「漏麺(シミョン)」といったそうである。ヒョウタンの底に穴を開け、それにリョクトウとソバの粉をやわらかくこねていれると、それから漏れ出して、麺状になるし、ヒョウタンを高く持ち上げれば麺は細くなるという原理を利用したものらしい。これは中国の「河漏」が伝わったものである。
切り麺のほうの歴史は比較的新しくて、コムギが栽培されるようになってからではないかと推定されている。
 ソバだけで打つ場合もあるそうだが、何れにしても朝鮮半島の麺はめちゃめちゃ力を入れてコシの強い麺にするのが特徴らしい。

実は、今回このような調理方法を紹介するのが目的ではない。

 下記は「旧朝鮮における日本の農業試研究の成果 農林省農業研究センター 1976」から読み取ったものである。

 ・・・・一九二〇年頃の記録でソバやリョクトウ、コムギの栽培地の分布をみると、ソバの栽培地の分布はほぼ全域にわたっているが、傾向としては北半分に多い。そして、日本の焼畑に相当する火田の分布は北に多い。たしかにソバが多く栽培されていたとうなずける。リョクトウの栽培されているところも半島の全域わたっているが、西半分のほうに多くて、ソバは栽培されているがリョクトウのないところもある。コムギは半島の南半分に多く、水田でイネの裏作として栽培されている場合と、畑で栽培されている場合がある・・・・。

 この資料を見ながら、私は韓国のソバ研究者たちのことを考えずにはいられない。
自分たちの国であったところの農業の記録が韓国にどの程度残されているのか。さらに、日本が持っている朝鮮に関する日本語の記録を、日本語が読めない若い世代に対して、日本人として何をすれば良いのか? 彼らは今どの程度の情報を北朝鮮から受け取ることが出来るのだろうか?

彼らは私にとって、大切な親しいソバ研究者仲間である。

最初から政治的な話になって恐縮であるが、先日の核実験に対する日本独自の制裁が盛んに議論されている。私はこの紙面を借りてそれにとやかく言うつもりはない。ただ、ソバの世界各地の現状と歴史を調べていると、国家権力の狭間に追いやられて、国境の移動に振り回されている貧しい農民たちがソバを守ってきたのだろうと、考えられて仕方が無い。

そして、研究者というものは・・・・・・

かなり気楽に「ソバの散歩」をと考えて始めたが、改めて、世界の歴史を見る視点をしっかり持たなければならないと感じている。

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